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メキシコのバス旅で見える風景と想い:書き下ろし短編小説

更新日:7月9日

こんにちは。今回はメキシコ・レオンからメキシコシティへのバス旅をよくする編集長が、読者の皆様にバス旅の様子が伝わってくるよう、短編小説を書きました。バスから見る風景とその時に思うことをシンクロさせて書いてみましたので、是非休憩時間やコーヒータイムのおともにご覧ください。


※本文中の写真は全てイメージです

 


バス停に着いた。まだ私が乗るバスは到着していないようだ。

レオンのバス停もここ数年で大分改装されて、今は待ち時間も苦ではなくなった。


搭乗のバスに乗るときにはIDを見せて、預け荷物があるときは係員の方に自分の荷物の席番号と行き先を伝える。たまにバスに乗っているとついつい「あれ、荷物はどうしたのかな」と預けたことすら忘れてしまいそうになる。それだけバスの中でボーっとしてしまうのかもしれない。


自分の指定の席に着いたらまずは足をゆっくりとおろして、充電コードの挿し口を確認。これ、たまに全く使えないときもあるので、常に充電バッテリーを持つようにしている。今日乗るバスの席は充電がしっかりできる!そしてワイヤレスイヤホンをスマートフォンに接続したら、自分の好きな曲を流して、完了。あとは出発を待つ。だいたい出発は定刻より10分ほど遅れるものだ。それも予定範囲内のこと。結局途中の道が渋滞しているかしていないかで、到着時間より早く着いたり、予定通りだったり、多少遅れたりする。



バスのことでいえば、私はいつもインターネットから予約をしている。ここで気になる方にお伝えしたいのが、バスにはDe PasoとLocalの2種類があり、Localは自分の乗るバスは、出発地が始発(例えばレオン→メキシコシティなら、レオン始発)、De Pasoはどこかを経由してくるバスである(レオンだとよくあるのが、Aguascalientesが始発でレオンは次の停車駅)。De Pasoは始発ではないため、道路渋滞に左右されやすく遅れやすい。なので、予約する際はLocalをおススメする。


さて、バスがようやく出発。靴やカバンが沢山売っている細い路地を大型バスが通った後、しばらくすると大通りに抜ける。もうその頃になるとウトウトとしてくる。朝早かったし、飲んでいる乗り物酔いがきいてきたのかな・・・



そうして眠ってしまった私。目を覚ますとすでにバスは有料高速道路を走っていて、横にはアガベ畑が見えている。そうか、テキーラの原材料でもあるアガベの畑があるなら、まだグアナファト州かな。しかしいつみてもこのアガベ畑には癒される。Agave Azulというように青々しい美しいアガベは成長した後アガベシロップになるのか、それとも地域によってはテキーラになるのか・・・と思わずに考えている。


最初の料金所(起きてる間での)しばらくすると遠くに油田のような光景が見えてくる。これはサラマンカ付近まで来たという目印である。それ以外は何もない原っぱが続く。そしてその奥に一本スーッと立つ木を見ていると、あそこまでちょっと歩いてみたいなと思ったりもしている。


Continentalのタイヤの形をした看板が見えてきたら、セラヤが近付いてきた証拠。この辺りは領事館からの注意喚起でもある通り、少々治安がよくない場所なので、しっかりとしたバスに乗っているとはいえ、少し身が引き締まる。何事も起こりませんよう・・・と思っていると日系企業が入る工業団地が左手に見えてくる。おそらく建設した当初は周りに何もなく、畑や荒野だったのだろう。それがここまでの工業団地にするという、日系企業の皆様や現地のメキシコ人の方々の当日の努力に頭が上がらない。あ、スターバックスのあるガソリンスタンドが見えてきた。もうすぐケレタロ州に入るんだな。



少しお腹がすいてきた。そろそろ家で握ってきたおにぎりとおやつでお昼でもしようかな。バスターミナルでサンドイッチやハンバーガーを買うのもいいが、少々割高で、冷めてしまうと美味しくないものもある。


おにぎりは塩むすび。すぐに冷房のきいたバスにのるとはいえ、汁気のあるものだと痛みやすいので、塩むすびや痛みにくい食材をいれたものにしている。このバスでおにぎりを食べているのは、きっと私くらいだろう。でも日本人の読者の方にはこの日本の誇るファーストフード・ONIGIRIのあり難さや心の拠り所さ?を異国でも感じてほしいくらいだ。学生時代のバスでの修学旅行の思い出が出てきて、あの時母に握ってもらった酸っぱい梅干しのおにぎりの味を思い出しては、朝早くから起きておにぎりを娘のために握ってくれてありがとうという想いを感じた。


これ以上おにぎりについて語っているとこの記事がおにぎりへの愛だけになってしまうのでこれくらいに。


さて、バスはちょっと坂になった割と綺麗に舗装されている道路を走り続ける。坂とはいっても化粧室を使っていても気にならないくらいの坂。こうしてレオンよりも標高の高いメキシコシティに向かって、徐々に標高があがっていくんだなと感じた。



岩肌がむき出しになる地層に挟まれた道路。その地層を見ていると、ここにもしかして化石が隠れていないかなんてことも考えてたりする。きっと日本では発掘できないような世紀の発見になれる!?なんて考えたりしてたら手があったかくなってまたウトウト・・・バスに乗っているとこうして起きては寝ての繰り返しになってしまうものだ。


そしてバスからは民家がたまに見えてくる。ケレタロ州はあっという間に過ぎて、あっというまにメキシコ州に入る。メキシコ州って大きいんだなといつも思っている。この辺りから携帯の電波が入らなくなってくる。そう、このタイミングこそが一番ゆっくりできていろいろとこれからのことを考えたりできる時間なのだ。



私のスマートフォンに入っている音楽はいろいろ。邦楽から洋楽、はたまたラテンミュージックも多い。自分が中学生時代だったころに流行った曲を聴くと、「ああ、あんな田舎からよくここまで出てきたよな、当時の自分はこんな遠く離れたところに来るなんて思っていなかっただろうな」と思ったり、大学生の頃に流行った曲を聴けば、「同級生の中できっとメキシコでバスに乗っている人、いないだろうな」とか、社会人なりたての頃に聞いた曲なら「あの時辛くて会社でも泣いていたりしていたけれど、その頃よりは強くなれたかな?」と思ったり・・・。聞く曲によって持っている思い出がそれぞれ違い、今の自分と重ね合わせている。そして何よりいつも出張に行くときは本気で仕事に取り組むので、元気付けられる曲は必ず聴く。或る意味でこの電波のないバスでの時間は私の過去を振り返り、これからの自分はどうしていくのか計画ができる時間になっているのであろう。


まだメキシコ州、イダルゴ州かな。本当に電波の入らない荒野だな。うちわサボテンが沢山生えている。このサボテンに近付いたら刺されて痛いだろうな、けれど私はいつかこのサボテンをバックにして、ちょっとワイルドに撮影してもらいたいなとも。メキシコらしくてよくない?


だんだんと交通量も増えてくると、いよいよメキシコシティまであと1時間から1時間半で着くんだなと思わされる。そして崖の上にちょっとしたショッピングモール(おそらくメキシコ州のどこか)が見えてくると、ああもう近いなという目印。急カーブのところもあるので、どんどん標高があがっているのだろう。



料金所はそこそこの混雑。きっと週末や大型連休の時はこの倍くらいの交通量なのだろう。ああ、都会に近付いているんだな。そしてしばらくすると何やらカラフルな家が建つ丘と、ロープウェイのようなものが見えてくる。丘の上、行く途中に家がこれでもかというくらい隙間なく建てられていて、その上をロープウエイが通る。このロープウエイ、どうやらこの地域に住む人々の大事な交通手段らしい。丘の上に住む人々は貧困層が多く車もない。そうした人が生活に困らないようにロープウエイを建設したようだが、長年メキシコに住む方からは治安がやはりよくないので、行かない方がいいといわれた。メキシコシティの煌びやかな街並みと大都会から1時間ほどの地域はこうしたエリアなのか・・・



そうしているとバスはちょっとした渋滞に巻き込まれる。メキシコシティの入口はいつでも混んでいる。特にメキシコ人のお昼時の14時以降は混む。出来たらこの時間より前にメキシコシティに入るようにした方が、バスの中で渋滞のイライラを感じずに済むのかな。もうすぐだ。メキシコシティに着いたらまずホテルにチェックインして、その後はどこに行こうかな。あまり無理せず翌日の準備がいいだろう。だいたい初日はバスの旅の疲れを取りたくて、ホテルに籠ることが多い私である。


そして車内アナウンスでもうすぐメキシコシティの北部のバス停に到着。荷物の引換券を係の人に渡して荷物を受け取りバスターミナルへ。このバス停はレオンのバス停より数十倍も大きく、様々な方面に行くバスがひっきりなしに出入りしている。モンテレイやチワワ、今は見ないがアメリカのシカゴやサン・アントニオに行くバスまで!いつも思うが、こうしてバスに乗って遠方を目指す人々はどのような事情があっていくのだろう。家族のため、仕事のため、其々色々な想いがあるんだろうな。さて、身の回りの荷物に注意しながらUberを呼ばなきゃ。



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