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国際交流基金メキシコ日本文化センター・大野所長「メキシコと日本の文化交流をもっと広げ深めたい」

今回は昨年春に国際交流基金メキシコ日本文化センターに赴任してこられた大野徹所長にインタビューをしました。


なんと今回が3回目のメキシコ赴任になるという大野所長。メキシコだけでなくブラジルへの赴任経験もあり、ラテンアメリカと日本の文化交流に取り組んできた方です。そんな大野所長に、前回・前々回の赴任時と変わったところや、今後メキシコでどのように日本文化を広めたいかなどをお聞きしました。

 

<目次>

 

海外で働きたい!その夢をずっと追いかけてきました


ー大野所長は国際交流基金に入所以来、メキシコに3回、ブラジルに1回赴任されております。

大野所長:就職について考え始めたころころから海外駐在員になりたい、海外で働きたいという夢を抱くようになりました。今思えば、サッカー少年だった小学生のころ、ペレやマラドーナといったサッカー選手に憧れたことがその後の職歴につながっているようにも思います。子どものころの夢が叶ったと言えるかもしれません。前職の銀行勤務時にスペイン語研修を受けられたことでスペイン語圏がぐっと身近になりました。

ーブラジルとメキシコ、それぞれで印象に残っていることを教えてください。


大野所長:30代のブラジル赴任で印象的だったのは、ブラジルの人々の優しさです。私の下手なポルトガル語を一生懸命に聞いてくれましたし、ゆったり気さくで何かと温かくしてくれました。一方で、20代のメキシコ赴任時よりも貧富の差を感じました。ヘリコプターで出勤するような大企業の重役が住む高層マンションの足元には、マンホール下で寝起きしている子供たちがいる…。あまりの格差に心が痛みました。


メキシコの人たちもブラジルと同じくみな優しいですね。まさにMuy alegreです。また、各州、各地方、各民族の文化・習俗が色彩豊かにモザイクをなしていることは、メキシコの多様性と豊かさを表していると感じます。ラテンアメリカ最大の経済・市場規模を誇るメキシコですが、その豊かな文化も特筆されるべきところで、多くの方々に知っていただきたいと思います。ブラジル、メキシコとも、それぞれの異なった”味わい”があり、ふたつの国で文化交流の仕事に携われたことはとても幸運でした。


メキシコにおける日本文化の人気に驚く


ー今回大野所長にとって3回目のメキシコ駐在になります。前回と変わった!と思う点を数点あげてください。


大野所長:前々回は1992年に、前回は2009年に赴任して、今回は3回目のメキシコ赴任です。前々回は30年も前のことですから、それはもうあれこれ変わっていて当然ですよね(笑)。前回の赴任から数えても、干支が一回りしていますので、相当変わったところがあります

今回、わたしが日常生活の中で大きく違うと感じるのは、UberとUber Eatsです(笑)。皆さん当たり前のようにUberで移動し、Uber Eatsでデリバリーを頼んでいらっしゃる…。私も先ほどUber Eatsで昼食を届けてもらいました。ここ3年間のコロナが後押しをした面もあるのでしょうが、30年前は、そもそもスマホがありませんでしたし、10年前でさえスマホ一台でなんでもできるわけではありませんでした。メキシコに限ったことではないのですが、前回、前々回の赴任を思い起こすと「世の中変わったなぁ」との思いがします


仕事に関連したところでは、文化イベントの減少とオンライン会議の増加も顕著と感じます。国際文化交流の仕事をしていますので、閉鎖されていた劇場、映画館、コンサートホールが再開され、コロナ禍で衰えていた文化活動が息を吹き返し、交流事業が盛んにできるようになりつつあることをうれしく思っています


メキシコ州・Toluca市で行われた写真展の様子

日本文化の関心度が高いことが伺われます(*1)


ところで、メキシコシティのラーメン専門店の急増には驚いています。日本食レストランは以前からたくさんありましたが、ラーメン専門店がこれほどの軒数にのぼるとは…。日本食がメキシコの人々どれほど広く受け入れられたか、よく分かります。


バヒオ地域での日系企業の躍進により、日本語人材のバヒオ地区への集中が起きるなど、その影響は広範囲に及んだ、ととらえています。日本の存在感がより大きくなり、文化交流にも良い影響を与えている、と実感しています。交流の場や機会が増え、より広く深く国際文化交流事業を展開できるようになりました。


日本食レストランが増えたこと、バヒオ地域が新たな文化交流の場となったこと、どちらもメキシコと日本の交流がさらに深まっていく兆しだと思います。


前回赴任時にはブタインフルエンザと呼ばれた新型インフルエンザの流行があり、今回のコロナ禍と同様、文化活動が制限され、マスク生活を余儀なくされた時期がありました。今回の赴任直後も「またマスクか」「また一時閉鎖か」との思いがあったのですが、どうやら悲観する必要はなく、良い兆しが見えてきたように思います。


COVID19前にそのまま戻ることはなくても、工夫して文化交流を行いたい


ーCOVID19が落ち着き、今後も貴基金の対面での活動が増えてくると存じます。これから来年に向けて、どのように日本文化を紹介していこうとお考えですか。


大野所長:コロナ禍は、ひとびとの生活習慣や行動パターンに少なからぬ変化を及ぼしましたし、コロナ前の状態にそのまま戻ることはないだろうと感じています。


文化活動や交流事業も同様で、オンサイト/オンライン/ハイブリッドの住み分けや使い分けをはっきりつけていかねばと思っています。


例えば、音楽公演であれば、会場でナマの音を聞くことの価値はたいへん大きいわけですが、オンライン配信もできれば、会場規模をはるかに超える数の聴衆に演奏を届けられます。経済的な規模も、より大きくできる可能性があり、演者も聴衆も、恩恵を被りつつ、文化に勢いを与えられるのではないか、と考えています。


あるいは、日本語学習/日本語教育の場面でも、オンラインの活用がさらに重要になるのではないか、と感じています。教室で先生と学習者が直に触れあいながら教え、学ぶことにはオンライン授業やeラーニングにはない良さがあります。が、コロナのせいでeラーニングが進歩したのも事実で、今後、スマホで日本語を勉強する人が増えるのではないか、とも感じています。


ー音楽公演といえば、昨年はグアナファト州・レオン市で行われたMas Japon en GTOでの尺八とマリンバのコンサートが大盛況でした。


大野所長:ありがとうございます。予想を上回る反響があり、感謝しています。コロナのせいで長期間にわたって文化イベントが制限/自粛されることとなり、観客となる一般の方々には「コロナ疲れ」と「文化イベントへの期待の高まり」があったことと思います。聴衆の多くの方々に、久しぶりに生の音楽を聞ける喜びに浸っていただけたのではないかと思います。



世界的に高く評価されている日本の文化やアーティストは多い


ー様々な文化を紹介する国際交流基金ですが、大野所長ご自身、「こんな日本文化をメキシコに紹介したら面白い」というものは何でしょうか。


大野所長:舞台公演や展示事業、あるいは映画上映などのいわゆる文化事業とは少し形式が違いますが、日本の作家や文学作品を紹介していけたら面白いのではないかと思っています。日本の文学作品は、メキシコではそれほどには紹介がされていません。日本人作家作品のスペイン語翻訳出版は、メキシコのみならずスペイン語圏のみなさんに作品の魅力に触れる機会を広げるものと思います。また、日本以外の外国に長く住み、マルチナショナルに活躍している日本人作家の方もいます。そんな方々を含めて、作家による講演を実現できれば、作品の魅力を作家自身に語ってもらえ、さらに交流・理解が深まることと思います。


また、日本映画の上映も引き続き力を入れていきたいと考えています。戦前・戦後の「日本映画黄金時代」の名監督や名作のファンはメキシコにも少なくない一方で、近年、国際映画祭で高く評価され、注目を浴びている日本人監督も何人もいます。


文学、映画にとどまらず、音楽、建築などほとんどあらゆる分野で日本人アーティスト/作品が高く評価されています。世界的に見ても日本の文化=アートが流行っていると言っていいでしょう。そうしたアーティスト/作品をメキシコのみなさんに届けられたらと考えています。


ー大野所長に質問です。3回目のメキシコ駐在で、前回できなかった体験を、今度こそ挑戦してみたい!というのは何でしょうか。


大野所長:前回赴任時には機会のなかったダイビングを17年ぶりに再会しました。メキシコには美しく豊かな海があちこちにありますので、いろいろなプラヤ(=ビーチ)を訪れてみたいと思っています。


直に触れ合い、育むことの大切さも今一度確かめたい


ー最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。


大野所長:この3年ほどの間、世界中がコロナに翻弄され、人と人との交流が大きな制約を受けました。が、ここへきて感染の収束に向けた明るい兆しも見えはじめ、旅行や交流への期待も高まってこようと思います。オンライン/バーチャルもいいけれど、直に触れあって育むことのできる大切なものもあること、確かめてみませんか


注1:写真元URL https://www.facebook.com/fjmex1


経歴:

大野 徹 (Toru Oono)

小学4年生以来、長くサッカーに熱中。4年間の銀行勤務の後、1991年に国際交流基金に転職し、2年目にメキシコへ初めての海外赴任。以後、2001年ブラジル(サンパウロ)、2009年メキシコ(2度目)赴任。日本と諸外国との国際文化交流業務の一環で、展覧会、舞台・音楽公演、映画上映などの文化芸術イベントのほか、国際会議、翻訳出版、日本研究、日本語教育などに携わる。一女(高1)の父。58歳。

 

編集後記


今回が3回目のメキシコ赴任となる大野所長。メキシコだけでなくブラジルへの赴任経験もお持ちで、まさに”ラテンアメリカ専門”という称号が相応しいと思いました。また、ご自身の幼いころからの夢を着実に実現していき、文化交流を通してメキシコと日本の絆を深める ためにはどうすれば良いかを常に考えていらっしゃいました。

南バハ・カリフォルニア州のLa Pazに旅行 に行かれた時に、ケレタロとレオンからいらしていた日本人観光客に会い、日本人の多さとバヒオ地域の存在感を感じましたと話しており、いかに数年前と比べて日本人・日本文化がメキシコに浸透し、またメキシコ人から信頼感を得ているか、大野所長のお話から改めて痛感しました。

 

お問い合わせ先


国際交流基金 メキシコ日本文化センター






所在地:Avenida Ejercito Nacional #418 Int. 207, Colonia Polanco V sección C.P. 11560, CDMX, México

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Tel:+52 (55) 5254 8506

Eメール:fundacionjapon@jpf.go.jp ウェブサイト:https://mc.jpf.go.jp/


国際交流基金メキシコ日本文化センター図書館

開館時間:月~金 10:00 ~ 18:00


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執筆者紹介:




温 祥子(Shoko Wen)

MEXITOWN編集長兼CEO。メキシコ在住5年半。MEXITOWN立ち上げて今年で3年目に突入。これからも様々なジャンルの方をインタビューしご紹介していきます!趣味は日本食をいかにメキシコで揃えられる食材で作ることができるか考えること。日本人の方が好きそうな場所を探し回ること。



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