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YKK MEXICANA 久保社長「人財を育てることがメキシコでの必須条件」

  • 2022年12月12日
  • 読了時間: 10分


世界72か国に拠点を持ち、グループ全体で44,410名(※1)が働くYKK。ファスナー製品でおなじみのYKKですが、メキシコ法人のYKK MEXICANAはメキシコに進出して今年で28年。イラプアト市には2000年に工場を建設し、グアナファト州に進出した日系企業としては長い歴史を持っています。


そんなグアナファト州で長年稼働するYKK MEXICANAの久保秀之社長に今回はインタビューをしました。地域の環境を考慮しながら事業の成長・安定についてどのようなビジョンを持っているのか語っていただきました。

<目次>

お客様の変化する価値観・需要に合わせる


ーYKK グループでは全世界で年間100億本のファスナーを製造しています。読者のみなさんが一般的に想像される「スライドファスナー」以外でもスナップ&ボタンや、自動車向けの特殊なファスナーや樹脂ボタン等の部品を製造しています。そんな御社の事業戦略についてお話しください。


久保社長:YKK MEXICANAは1994年にプエブラにファスナー加工所を設置、2000年にイラプアト工場が完成しました。現在、メキシコシティ(支店)、イラプアト、トレオン(営業・サービス拠点)の3拠点があります。イラプアト工場の従業員は300人弱。日本人6人で会社の経営を見ています。私は2019年にブラジルからメキシコに来て4年になります。

弊社の事業戦略について、大きく分けて3つの側面からお話しします。


1.商品

2020年からの新型コロナウイルスのパンデミックで巣ごもり需要が増えたことで、お客様の考え方も変わりました。リモートワークを取り入れる企業が増えて、ドレスやビジネススーツ、スラックスなどの樹脂製のコイルファスナー要望が減少し、逆に家にいる時間が増え一挙にカジュアル化が進み、リベンジ消費も相成り金属製のジーンズ用ファスナーの売り上げが伸びました。弊社はスライドファスナーで有名ですが、ジーンズなどに使われている金属製のボタンも製造しています。メキシコでは代表的なブランドではOGGIのような衣料ブランドをはじめ、Walmartなど流通ブランドが独自企画するジーンズにも使われております。お客様の変化する価値観・需要に合わせて、今後弊社も引き続き柔軟に対応出来たらと考えています。


YKK MEXICANAにあるショールームの写真

2.エコ(環境)

ここ2~3年で急速に進みました。ファスナーの材料がエコであることは当たり前で作り方もエコでないとダメ、環境に配慮した製造法であることを証明してほしいというお客様の要望が増えました。そうしたお客様の要望に応えて、全世界で再生PET から作ったファスナーを増産しています。


また、YKK全社で掲げているスローガンとして、「2030年までに温室効果ガスを、2018年の半分にする」「2050年までにゼロ・エミッション(カーボン・ニュートラル)の実現」があります。電気もグリーンエネルギーを利用し、弊社工場にソーラーパネルを設置・整備しています。工場はファスナーとスナップボタンの2つのエリアに分かれていますが、ソーラーパワーにより通常の電気の消費量のうち、50%以上の電気を節約することが出来ています。


イラプアトでは水が貴重です。工場設立時作った井戸は180メートルほどの深さから汲み上げていますが、水位が減ってきているため350メートルほどの井戸を掘り、水不足に対応していく予定です。このような中弊社では水リサイクル設備を準備しており5割以上再利用していく予定です。地域の住民の皆様の生活に影響がないよう、YKKグループ一員で環境保護に取り組んでいきたいです。


3.納期

新型コロナウイルスのパンデミック以降、どこの企業も苦労している点です。弊社も新型コロナウイルスのパンデミックの影響で2か月ほど工場を閉鎖せざるをえなくなった時期がありました。その中で新型コロナウイルスの医療現場で使用される使い捨ての医療服に用いるファスナーの発注が増えたため、少数の従業員に出社していただき、工場のほんの片隅で製造をしました。


その後前述でも申し上げましたリベンジ消費の影響で注文が急増。そこで問題となったのがロジスティックです。物流運賃も2019年と比較すると5倍になり、新型コロナウイルスの影響で政府指針からアジア各国での工場の操業制限、材料がなかなか入らない状況に直面しました。新型コロナウイルスのパンデミックは落ち着いてきてはいるものの、米中対立、ロシアによるウクライナ侵攻など不透明な要因はまだ続くものとみられます。こうした状況を踏まえてお客様の満足される納期を実現できるように取り込んでいきたいと思います



ーグアナファト州に進出した日系企業としては歴史が長い御社です。地域貢献についてはどのような取り組みをされていますか。


久保社長:YKKグループでは環境デーを設定しています。そして弊社では環境デーに合わせて植樹をしています。今年は多くの従業員が住む地域にあるサッカー広場に植樹とゴミ拾いを行いました。環境デーにこうしたイベントを毎年継続しています。木はグアナファト州の気候に合う木を選んで植樹しています。


また、キンタナ・ロー州にいるマヤ族の女性の自立した生活をサポートする目的で現地NPOを通じ 、マヤ族が手掛ける民芸品に使っていただけるようファスナーとミシンを寄付してサポートしています。


人財を大事にした人事制度の導入で、離職率が改善!



ー御社は”人財”を大事にし、離職率も抑えることに成功しています。


久保社長:私が着任した2019年時は離職率が60%近く、ある部署によっては年に2回も全員が入れ替わるという状況でした。また、ファスナー部門とスナップ&ボタン部門で待遇が違うことが不公平だという声もあがっていました。これではいけないと思い、2020年から全社で統一された人事制度を導入しました。


私は2001年から2018年までYKKブラジル社にいました。YKKブラジル社は50年近くの歴史があり、ローカルの人財が既に育っている環境でした。その時に導入した人事制度を参考にし、メキシコの労務形態に合わせました。


具体的にどのような人事制度だったか紹介します。


1.目標を立ててもらう

2020年に導入した人事制度でしたので、まずは従業員に2021年の目標を立ててもらいました。自分自身が来年どのようになっていたいのか、自分の評価はどうなっていてほしいかです。そして、その目標をもとに、2.に繋げていきます。


2.スキルマトリックスからキャリアプランを作成する

各従業員が所有する技術によってどのような作業が出来るのかを表すことができるスキルマトリックスを作成しました。そして作成されたスキルマトリックスをもとに、”先生”と呼ばれる従業員が就き、「あなたはこれが出来る・出来ない」という風に、評価される従業員が行う作業を目で見て実際に判断していきます。こうした評価方法で従業員は自分の評価が明確に把握することが出来、キャリアプランを描くことが出来ます。それは現場で働く従業員だけではなく、管理・総務の従業員も同じで、例えば経理担当者は今は売掛金の処理ができるけれども、来年は固定資産、そして原価管理ができるようになればいいと段階を踏んでいくことができるようになります。


3.役職別の報酬を設ける

組合員向け、スタッフ向け、セールスマン向け、マネージャー向けと、各役職別に応じた役職別報酬を導入しました。法令で貰えるアギナルドやPTUとは別に職種別の報酬を導入することにより、各役職のモチベーションの向上にも繋げようという意図があります。


こうした取り組みもあり、離職率は2020年は30%、2021年は20%、そして2022年現在では6%に落ち着き、月1%を下回るところまできています。2019年に導入した人事制度は数字に見えて成果が出てきているようです。


各部門のマネージャーが長くいてもらうことで現場が混乱することを避けたいです。

メキシコでは”人財”の育成が必須条件であることをMEXITOWNの読者の皆様には強く伝えたいです。


どうやって現場の幹部層と信頼関係を築いていくべきなのか、私自身も非常に苦労しましたが、沢山会話をし、YKKを理解してもらうことが不可欠です。


現地の方と心が通じ合えた瞬間に、やりがいを感じる


ー2022年も残りわずかですが、久保社長にとって、今年嬉しかったことを教えて下さい。


久保社長:人事制度を導入して人の入れ替わりが落ち着いたことと、現地の方と心が通じ合えたことですね。経理マネージャーの方で2年間弊社に勤務していた方がいました。その方はメキシコシティからこちらに来ていたのですが、家族の都合でメキシコシティに帰らなくてはならないため退職することになりました。彼が退職してだいぶ経ってから、「弊社のシステムの補完に非常に良い管理システムがあるよ」と探していたシステムを連絡してきてくれたときには非常に感動しました。メキシコ人の方は好条件の待遇がある会社にすぐ転職してしまいドライな印象があったのですが、こうした律儀な面もあると感じた瞬間でした。


心からこうして現地の方と通じ合うことが出来たときは本当に嬉しいので、来年はもっとこうした機会を増やしていきたいです。


ー久保社長自身が来年チャレンジしたいことは何でしょうか。


久保社長:メキシコに着任したのが2019年で、その後すぐに新型コロナウイルスのパンデミックがあったため、ここ2年間殆ど何もできなかったといっても過言ではないかもしれません。弊社の支店のあるメキシコシティやトレオンには行ったことがありますが、それ以外の地域に旅行に行きたいですね。トレオンよりも北の地域、バハ・カリフォルニア州、オアハカなど、メキシコは一部しか知らないので沢山のところにいくことが目標です。


また、来年の目標ではないのですが、3年ぶりに社内のクリスマスパーティーを行うことが出来るのを非常に楽しみにしています。2年間我慢していたので、イラプアト市内のオープンスペースを借りて1年を締めくくりたいです。


テレビで見る海外はごく一部の姿。是非実際に来て目で見て確かめてください!


ー最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします!


久保社長:私は入社以来、ラテンアメリカの国でブラジルとメキシコの2か国に赴任し、それぞれの地で様々な経験をさせていただきました。


ブラジルに赴任すると聞いた時、日本のテレビはジャングルとリオのカーニバル、アマゾン川のピラニアやピラルクーしか取り上げなかったので、初めて空港から降りて目にした高層ビルが立ち並ぶサンパウロの街には驚いたのをよく覚えています。このようにメディアが伝える部分がほんの一部だったことを思うと、やはり多くの方には、海外に進んで来て頂き、思う存分仕事をし、遊んでほしいと強く願います。


メキシコはチャレンジできる国です。日本人だからという差別も感じないし、気候も素晴らしいです。皆さんが受け入れてくれ、充実した・やりがいのある仕事ができると思っています!


また本日、グアナファト日本人学校の生徒の方々が弊社に工場見学にいらしていただきました。メキシコの日系企業で働く親御さんと一緒に来た子どもたちは、将来的に海外に出て働く可能性のあると思うと、将来就職活動でYKKに面接に来ていただき、この工場見学がきっかけで入社したい!という子供たちがいたら嬉しいですね。そんな日を楽しみにしています。


経歴:

久保 秀之 Hideyuki Kubo

神奈川県鎌倉市出身

1993年 慶應義塾大学商学部卒業

1993年 YKK入社

2001年 YKKブラジル社出向

2019年 YKKメキシコ社出向


※1 2022年3月31日現在

※2 インタビューは2022年10月中旬に行われたものです

編集後記


MEXITOWNは久保社長のインタビューを行う前に、グアナファト日本人学校の生徒の皆様と一緒に工場見学に参加させていただきました。工場見学の後、生徒の方からの質問にも丁寧に答えていた久保社長の姿が印象的でした。日本でもなかなか経験することのできないYKKの工場見学は、日本人学校の生徒の皆様には非常にいい思い出になったはずです。


着任後に人事制度を導入し、数字で結果を出した久保社長。メキシコの離職率を改善するのはインタビュー記事で語られている以上の苦労があったはずですが、それを全くひけらかすことなく、従業員の方特にマネージャーの方を大切にしている様子が伝わってきました。この記事がリリースされる頃は丁度クリスマスパーティーが開催された後ですが、来年のYKK MEXICANAはより風通しの良い、従業員の方が働きやすい職場になっていることは間違いないでしょう。

執筆者紹介:




温 祥子(Shoko Wen)

MEXITOWN編集長兼CEO。メキシコ在住5年半。MEXITOWN立ち上げて今年で3年目に突入。これからも様々なジャンルの方をインタビューしご紹介していきます!趣味は日本食をいかにメキシコで揃えられる食材で作ることができるか考えること。日本人の方が好きそうな場所を探し回ること。



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送信ありがとうございました

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