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「激変する国際社会ーメキシコと共に新しい世界秩序に対応していきたい」在メキシコ日本国大使館・福嶌教輝特命全権大使・特別インタビュー

読者の皆様、こんにちは。


早いもので2022年の上半期も今月で終わり、来月からは下半期がスタートとなります。そこで、2022年の折り返しともなる今月の特別インタビューとして、今回は在メキシコ日本国大使館・福嶌教輝特命全権大使(以下、本文中は福嶌大使)になります。


メキシコ生まれの福嶌大使は、昨年11月より着任されました。COVID19のオミクロンの大流行やウクライナ侵攻などの激動の世界情勢の中、大使がメキシコで過ごされた上半期はどのようなものだったのでしょうか。また、下半期に向けた今後のメキシコの日系社会についての想いなどもお話しいただきました。

<目次>

メキシコのために外交官になりたい


ー昨年11月より在メキシコ日本大使館・特命全権大使に着任されました。着任してから訪れて印象に残った場所や出来事をそれぞれ3つほどお話しください。


福嶌大使:着任後、多くの場所を訪問したので、3つに絞ることに悩みましたが、特に印象に残った3つのことをお話しします。


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1.自分が生まれたメキシコシティ・ポランコの病院

私にとってメキシコでの任務は今回が3回目となります。私はメキシコで生まれ、メキシコと日本のために外交官になりたい・メキシコに大使として着任したいという思いを持ち、外交官を目指しました。今回、その想いが叶ったことで、Acta de Nacimiento (メキシコの出生届)を頼りに、改めてメキシコシティのポランコにある自分が産まれた病院、”Hospital Santa Monica”を訪れることにしました。ここで私は生まれたという、自分のルーツを見つめなおすことが出来、感慨深いものがありました。改めてメキシコと私の繋がりを強く感じました。


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2.日系人の方との深い結びつきを実感したこと

2つ目はメキシコの各地の日系人の方々を訪問したことです。ブラジルやアルゼンチンなどでも多くの移住地を訪れました。もう日本に戻れないかもしれないという想いで日本を離れた日系人やその子孫の方々とお会いし、皆様の日本に対する様々な想いに触れました。着任後、グアナファト、ケレタロ、シナロア、ヌエボレオン、サンルイス・ポトシ、ハリスコ州等で多くの方とお話しましたが、今後も日系の方や留学など含め日本と繋がりを持たれている様々な方々にお会いしたいです。


2022年は日本人メキシコ移住125周年記念の年になります。後述でもお話ししますが、日系人の方々や日本に関心のある多くの皆さんご一緒にさらに何が出来るか考えていきたいと思っています。

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3.家族との想い出が詰まったグアナファトのピピラの丘

3つ目は家族との想い出のあるグアナファト州・グアナファトにあるピピラの丘です。現在も私の妻も外交官のため何度も夫婦別々に暮らす人生となり、2005年にメキシコに赴任した際は2人の娘は私と共に暮らすことになり、平日・土日と沢山の一緒の時間を過ごし、メキシコの各地を一緒に旅行しました。中でも先日、グアナファトのピピラの丘に行った時、当時娘達を連れてピピラの丘からグアナファトの街を眺め、3人で感動した時のことを思い出しました。娘たちは日本メキシコ学院(リセオ)で教育を受けたこともあり、メキシコで育ち・メキシコにお世話になったといっても過言ではありません。


このようにメキシコと私の人生の繋がりを様々な場面で思い出すきっかけが、上半期は沢山ありました。


何気ない日本の日常生活をメキシコの方にも知ってもらいたい


ーSNS(Social Network Service・ソーシャルネットワークサービス)などでご活動を積極的に配信されていますが、その時どのようなことを心掛けて配信されていますか。


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福嶌大使:日本政府全体、特に河野太郎・元外務大臣時代から外務省ではSNSを使って、外交官たちが何をしているのかを日本や世界の人にもっと発信していこうという戦略的広報を強化しました。私も在アルゼンチン日本国大使時代からInstagramとTwitterを使って情報発信をしていました。


やはりInstagramやTwitterはメキシコの若い方が日本文化に触れられるチャンスを与えることが出来る便利なツールだと思います。アルゼンチン時代のある日、訪れたレストランのスタッフから突然「Twitter見てますよ!」と声をかけられた時は嬉しかったですね。


メキシコに来てからも早速、前述で触れたActa de Nacimientoをカバー写真にしてTwitterアカウントを開設しました。すると1日で一気にフォロワーが3万人になりました。投稿内容は大使館の文化班担当者と常に確認し、受け手はどう感じるか、何に関心があるかを考えるようにしています。


ー在メキシコ日本国大使館でもSNSアカウントがありますが、そのアカウントと発信する内容を住み分けていらっしゃいます。


福嶌大使:大使館ではTwitter、Youtube、Facebook、Instagramのアカウントを持っており、日本の政策ポリシーや大使館の日頃の活動など、より公的な内容を発信していくようにしています。一方、私のTwitterやInstagramは同じような内容にならないよう、日本大使館の大使は普段何をしているのか・どんな仕事・どんな生活をしているのかといったより身近な話題を取り上げるようにしています。最近ではメルカドに行った時の様子や、メキシコのパンのConchaと日本のメロンパンが似ていることを紹介したり…もちろん、政府要人に会った時のことも時々投稿しています。

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他にも娘から許可を取り家族の写真や、日本の生活や風習を伝えるために日本での成人式や桜、雪景色などを投稿すると非常に反響がいいです。おかげさまでTwitterのフォロワー数は約42,000フォロワーにもなり、在外にいる日本の大使の中では岩井文男・駐サウジアラビア特命全権大使に次いで多いフォロワー数となっています(※2)。




中南米は1つではない、それぞれの魅力があります


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ー福嶌大使はこれまでアルゼンチンやブラジル(サンパウロ)での赴任のご経験がございます。これらの中南米の国とメキシコでの違い(生活・人々)を教えてください。


福嶌大使:私の人生においては、中南米は最大のテーマとなっています。41年の外交官人生において半分以上は中南米や南欧の国に赴任しています。日本から見ると中南米の国はどこも同じかと思われてしまいがちですが、様々な切り口からそれぞれの国を見ることが出来ます。


アステカ、マヤやインカなどの古代文明があり、古くから王朝文化や大都市があった国は断然食文化が豊かです。そのためメキシコ、ペルーなどは料理の種類だけでなくソースや野菜の種類等が無数です。ペルーにも魚料理も含め和食との親和性が高い素晴らしい料理があります。アルゼンチンはなんと言っても牛肉料理が3食というくらい、ブラジルはシュラスコ以外にも様々な川魚をフライにして食べたり…こうして語るだけでも全然違いますし話しは尽きません。


生活習慣にも表れています。例えば、ヨーロッパの影響を受けているアルゼンチンや南米には御手洗いに行くとビデが置いてあります。メキシコや中米では見かけたことがないので、南北で欧州的か米国的かにも違いがあります。


またスポーツに着目しても同様のことが言えます。メキシコからカリブ、ベネズエラあたりまではサッカー以外にも野球が盛んです。そこから南の国では野球はあまりなく、やはりサッカーが盛んですね。アルゼンチンは、ホッケー、ラグビー等英国の影響を強く受けたスポーツも盛んで、中南米はサッカーだけではなく国により大きな違いがあることを日本の皆様に知っていただきたいですね。


音楽でいうとより違いがはっきりしてきます。アルゼンチンのタンゴは日本の演歌に通じるような悲哀や失恋の歌をバンデネオン等を奏でながら歌い、官能的な踊りをする。反対にブラジルではサンバのような陽気で激しいダンスを踊ります。私はサンパウロのカーニバルに3年続けて参加したことがありますが、10時間くらいあのリズムに身を任せていたら数日打楽器の音が頭の中から離れません(笑)。そしてメキシコはマリアッチ。陽気で楽しくてワクワクしますし、心も和みます。


このように中南米は知れば知るほど奥の深さを感じる地域です。どうか中南米をひとくくりにせず、一つ一つ各国の持つ魅力を知っていただきたいです。


変化する国際秩序の中でも、メキシコと協力して新たな世界を築き上げる


ー2022年の下半期への抱負を教えてください。


福嶌大使:2019年から始まったCOVID19のパンデミック。3年近くも読者の皆様は大変な生活を強いられたと思います。4月25日にメキシコ政府はCOVID19はパンデミックからエンデミックに移行したという発表をし、COVID19の流行は一区切りついたのではないかと期待しています。在メキシコ日本大使館も6月からは通常通りの勤務体制に戻ります。COVID19の状況が悪化しない限り、下半期は様々な対面での行事を復活させたいです。


1.日本から多くのビジネスや観光の方々に来てもらいたい

2021年1月にはコロナ禍でも当時の茂木外務大臣がメキシコに来墨しました(※3)。コロナ禍に一区切りがつけば下半期からは観光はもちろん日系企業の方にも沢山来ていただき、日本とメキシコの間で往来が活発化してほしいと心から願っています。


2.文化イベント・行事を盛り上げていきたい

先ほどもお話しした様々な行事や文化イベントの復活です。10月にはメキシコシティと名古屋市の姉妹都市提携45周年イベントが日墨協会で行われ、11月にはチアパス州で榎本殖民団メキシコ移住125周年記念のイベントが行われます。また、来年は1888年に締結された日墨修好通商航海条約(※4)から135年が経ちますし、謂わゆる日墨交換留学の50周年、このほかにも日系人社会・外交・姉妹都市提携でそれぞれ何周年が毎年のようにあるので、COVID19が一段落したと期待し、盛り上げて開催していきたいです。


3.日系人や親日家の方と交流を持ちたい

日本に留学していた元留学生、各地にいる日系人の方、日本のことが大好きな親日家の方々と一緒になり、いくつもの機会を使って関わっていき、日本とメキシコの関係を深めていきたいです。


100年以上前に祖国日本を離れ、日本を想い続けながら大変苦労された日系人の方を日本政府としても日本とメキシコのため大切にしていきたいです。


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ヌエボレオン州の東北部日墨協会にて



4.ウクライナ侵攻による世界秩序の変化

今年の2月からのロシアによるウクライナ侵攻により2022年下半期の世界秩序は、これまでとは全く異なるものになると考えています。ロシアによるウクライナ侵攻は国際人道法違反であり、国際犯罪です 。新しい国際秩序の中でG20や安保理、様々な国際機関なども大きく変わっていきます。こうした変化の中でも日本はメキシコと一緒になって新しい国際秩序に対応していきます。国際政治だけでなくメキシコや中南米でもインフレ、エネルギー、サプライチェーン、金融システム含む経済問題など、将来の世界経済にも大きな影響を与えます。私も新しい国際秩序、経済問題に対して、外交官としてどう貢献できるのかを真剣に考える時期となり、ますます忙しくなりそうです。


メキシコは日本から見ても、地理的に一番近い中南米の国であり、400年以上の友好の歴史、明治以降、日本にとり初の平等条約を結んだ国であり、そうした経緯から国会議事堂のある東京の永田町に唯一大使館を持つ国でもあります。また、2005年の自由貿易協定は日本にとって初の本格的な自由貿易協定であったし、TPP11の重要なパートナーです。米国とアジア以外の国で唯一1300以上の日本企業が進出している国です。地震の際には互いに様々な支援を続けています。日本レストランも1,000以上に上り、アニメ、ルチャ・リブレ等は勿論実に多層で深い交流があります。両国には本当に数え切れない深い友好の絆があることを皆様にも知って頂きたいです。


人と人との交流を積極的に、時間を楽しんでください!


ー最後にMEXITOWNの読者の皆様へ、メッセージをお願いします。


福嶌大使:先ほどの繰り返しになってしまいますが、中南米は魅力のある国々が沢山あり、1つ1つが違うことを知ってほしいです。ニュースなどを見ているとメキシコを含め、中南米は政情不安や治安が悪い事ばかりが取り上げられがちで残念です。底抜けに陽気で、例えばキャプテン翼やコメットさんが大好きなメキシコ人がいたりと、とにかくメキシコや中南米各国の数限りない多彩な側面も是非知っていただきたいです。


COVID19のパンデミックと共生しうる時期に近付いていると期待しますが、この3年間で失われた人と人との交流をまずは積極的に行ってください。日本からこの記事を読まれている方も、メキシコからの方も、メキシコ人とスポーツをしたりパーティーをしたりしてメキシコとの時間をエンジョイしてください。


そして最後に、日本大使館は皆様の物です。何か生活面等で困ったことがあれお気軽に聞いて来てください!


ー福嶌大使、本日はありがとうございました!

※1 本インタビューは4月26日に行われたものです。

※2 4月29日現在のフォロワー数

※3 外務省「茂木外務大臣のメキシコ訪問」

※4 外務省「深化し続ける絆―日メキシコ外交樹立130周年」



経歴:

福嶌教輝 Noriteru Fukushima

昭和33年 メキシコ生れ

昭和55.10 外務公務員採用上級試験合格

  56. 3 京都大学法学部卒業

     4 外務省入省

平成 5. 8 日本国政府国連代表部(NY)一等書記官

   8. 1 在アルゼンチン日本国大使館 一等書記官

  10. 1 参事官 8 大臣官房領事移住部邦人保護課邦人特別対策室長

 12. 5 中南米局中南米第一課長

 15. 8 在メキシコ日本国大使館 参事官

 17. 1 公使

 18. 7 在イタリア日本国大使館 公使

 20. 8 大臣官房参事官兼欧州局

 22. 9 在スペイン日本国大使館 公使

 24. 7 在サンパウロ日本国総領事館 総領事

 27. 7 在アルゼンチン日本国大使館 特命全権大使

令和 元. 8 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当 特命全権大使   3.10 在メキシコ日本国大使館 特命全権大使

編集後記


「日本の大使って普段は何をしているんだろう」「大使館はいつも何をしているのだろう」こうした疑問を持っている方は少なくないと思います。そんな疑問を少しでもクリアにし、メキシコの方で日本が大好きな方や日系人、在留邦人にご自身の生活や日本の日常的な行事の一枚が分かる投稿をされている福嶌大使。TwitterやInstagramなどのそうした投稿を拝見していたため、お会いする前から親近感がありました。


そうとはいえ、いざ福嶌大使を目の前にインタビューとなると編集部も緊張しましたが、アルゼンチンやブラジル時代のお話の頃にはすっかり楽しい雰囲気となり、同席して頂いた文化担当班の方にも非常にお世話になりました(ご協力ありがとうございました)。


ウクライナ侵攻などで昨年の今頃とは違う世界秩序となり、インフレなどで私たちの普段の生活にも影響が出てきています。そんな混沌とした状況であってもメキシコと協力して平和な世界を構築していくために、外交官として何が出来るかを真剣に考える福嶌大使。それはおそらくメキシコ生まれでメキシコのために外交官になりたいと長年強く思ってきたからこそ出来る発言だと思いました。


そして、メキシコの方々の日本が大好きという想いは大切にしていきたいと改めて実感しました。

在メキシコ日本国大使館


住所:Paseo de la Reforma 243, Torre Mapfre Piso 9, Col.Cuauhtémoc, Alcaldía Cuauhtémoc, Ciudad de México, México. CP 06500


電話番号: (+52) (55) 5211-0028 

(代表番号が不通の場合: (+52) (55) 5091-3081)


領事窓口:月曜日~金曜日の09:15~13:15(除:休館日)

広報文化窓口:月曜日~金曜日の09:15~13:15(除:休館日)

その他の日は電話及びメールのみ受け付けております。


SNS情報:

福嶌大使


在メキシコ日本国大使館


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送信ありがとうございました

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